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努力家だけが知る世界――宮沢賢治『セロ弾きのゴーシュ』の魅力

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宮沢賢治セロ弾きのゴーシュ』の内容紹介

 

こんにちは、『文人』です。


努力する人の姿には、何だか心惹かれますよね。

頑張っている人は応援したくなりますし、自分も頑張ろうという気持ちになります。

宮沢賢治の名作にも、がむしゃらに努力する人間を描いた作品があるのを知っていますか?


宮沢賢治の童話『セロ弾きのゴーシュです。

主人公・ゴーシュはセロの演奏が下手。毎晩、セロの猛練習をします。

今回はそんなセロ弾きのゴーシュ』の内容と魅力をわかりやすく紹介していきます。

 

 

 

 

セロ弾きのゴーシュ』とは?

※「セロ弾きのゴーシュ」は『新編 銀河鉄道の夜』(宮沢賢治/著 新潮文庫)に収録されている一編です。

あらすじ

ゴーシュは町の楽団でセロを担当しています。今度の演奏会に向けて曲の練習をしていますが、ゴーシュは楽団のなかで一番下手。いつも楽長にしかられています。


家に帰ると毎晩、ひとりで猛練習。そんなゴーシュのセロの音を聴きつけて、猫や、鳥や、たぬきの子どもや、野ねずみの母子が夜ごと訪ねてきます。セロを弾いているうち、ゴーシュはいつの間にか、小動物たちの間で人気者になっていたのです。


そしていよいよ演奏会の当日になりました。曲は大成功。楽団のみんなはゴーシュの上達ぶりに驚き、褒めたたえます。


その晩遅く、ひとりになったゴーシュは、遠くの空を見上げ、物思いに浸るのでした。

 

  • 作者は宮沢賢治(明治29年~昭和8年)

    岩手県の花巻の生まれ。詩人であり童話作家

    イーハトーブ」を舞台に数多くの作品を残しました。「イーハトーブ」とは、郷土の岩手をモチーフに賢治が心のなかに描いた理想郷。


  • 作中の「セロ」とは、チェロのこと。

    チェロは弦楽器のひとつで、バイオリンよりも形が大きく、豊かな低音が出ます。

    「女性の体をモデルにして造られた」

    「人の声に最も近い」

    などと言われているそうです。


  • ゴーシュと小動物たちとの会話がユーモラスでおもしろい作品です。

    セロの練習を通して小動物たちと交流する場面は、作品の見どころです。

 

 

 

セロ弾きのゴーシュ』の魅力

 

①変わり者のゴーシュ

 

主人公・ゴーシュは町の楽団で「セロ」のパートを担当する演奏家です。

しかし楽団のなかでは一番下手。


ゴーシュは町はずれの壊れた風車小屋に独りで住んでいます。

楽屋での練習が終わると、重たいセロを持ち帰って、毎晩、夜を徹してセロの猛練習をします。


ゴーシュはちょっと変わり者。

壊れた小屋に独りで暮らし、生活も荒れています。


町の人たちとの交際はほとんどなく、楽屋での練習を終えて帰宅すると、また自主練習

一晩中セロを弾き、夜が明ける頃、倒れ込むようにして眠ります。


ゴーシュは生活のほとんどをセロの練習にささげているような人物なのです。

②小動物たちの訪問

 

独りで毎晩、セロの猛練習をしているゴーシュ。

その音を聴きつけて、猫や、鳥や、たぬきの子や、野ねずみの母子が夜ごと訪ねてきます。


下に引用するのは、真夜中に訪ねてきた鳥とゴーシュの会話です。

 

「鳥まで来るなんて。何の用だ。」ゴーシュがいました。
「音楽を教わりたいのです。」
かっこう鳥はすまして云いました。
ゴーシュは笑って、
「音楽だと。おまえの歌は かっこう、かっこうというだけじゃあないか。」

(中略)

「ところが私はドレミファを正確にやりたいんです。」
「ドレミファもくそもあるか。」
「ええ、外国へ行く前にぜひ一度いるんです。」
「外国もくそもあるか。」
「先生どうかドレミファを教えてください。わたしはついてうたいますから。」
「うるさいなあ。そら三べんだけ弾いてやるからすんだらさっさと帰るんだぞ。」

『新編 銀河鉄道の夜』(宮沢賢治/著 新潮文庫)収録「セロ弾きのゴーシュ」より引用

 

こんなふうに毎晩、小動物たちが訪ねてきます。

真夜中に無我夢中で弾いているセロの音色が、どうやら小動物たちを引き寄せているらしいのです。


ゴーシュのセロは、ある動物には眠る前の楽しみに、ある動物には音楽の練習相手に、ある動物には病気を治す薬になっていました。

ゴーシュは知らないうちに、小動物たちの人気者になっていたのです。


このようにセロの練習を介して、ゴーシュはさまざまな小動物たちと交流します。

 

③努力家だけが知る世界

 

この小動物たちは、「他者」の象徴としても読めます。

ゴーシュは真夜中に独りでセロの練習をしているつもりでしたが、実は、見えないところでちゃんと聴いている者がいました。

ひたむきな努力が、意外な他者の心をつかみ、つながりを生んだのです。



小動物たちとの交流は、本来の努力の目的(演奏会の成功)とはちがいます。

でも、努力することの本当のおもしろさは、結果よりも過程にあるということ。

それが『セロ弾きのゴーシュ』ではユーモラスに描かれているように思います。

 

 

 

まとめ

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宮沢賢治の童話『セロ弾きのゴーシュ』は、主人公・ゴーシュのがむしゃらな努力が意外なつながりを生んでいく様子を、おもしろおかしく描いています。

努力することの本当のおもしろさを体験させてくれる作品です。


「最短でうまくなる効率的な練習法」

「頑張らずに成果を出す方法」

といった努力のショートカットが流行る現代。


セロ弾きのゴーシュ』は、努力のほんとうの価値とは何かを考え直すきっかけになるかもしれません。

気になった人は、ぜひ本を手に取ってみてくださいね。

※「セロ弾きのゴーシュ」は『新編 銀河鉄道の夜』(宮沢賢治/著 新潮文庫)に収録されている一編です。

 

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