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居場所がないと感じた時に読みたい宮沢賢治『よだかの星』の魅力

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宮沢賢治よだかの星』の内容紹介

 

こんにちは、『文人』です。


弱い者がいじめられたり。

外見や生まれなどの理由から、理不尽な差別を受けたり。

生き辛さを抱える人のなかには、何も悪くないのに、不当に苦しめられている人がいます。


宮沢賢治の名作に、そのような弱い者いじめや差別を描いた作品があるのを知っていますか?

宮沢賢治の童話作品『よだかの星です。


主人公の「よだか」という鳥は、生まれ持ったみにくい姿のために周りの鳥たちから嫌われ、さらには殺されそうになります。

そんなよだかの星』の内容と魅力をわかりやすく紹介していきます。

 

 

 

 

よだかの星』とは?

※「よだかの星」は『新編 銀河鉄道の夜』(宮沢賢治/著 新潮文庫)に収録されている一編です。

あらすじ

よだかはみにくい鳥で、ほかの鳥たちから嫌われています。たかからは特にいじめられています。よだかは「たか」という名前のために、鷹から因縁をつけられていたのです。


ある夕方、よだかのところに鷹が訪れ、名前を変えろと迫ってきました。名前を変えないと、つかみ殺してやる、と鷹に脅されます。


夜になると、よだかは飛び立ちました。口を開けて、入り込んでくる虫たちを食べます。するとよだかは辛い気持ちになりました。自分が虫たちを殺し、その自分が今度は鷹に殺される。そのことがたまらなく辛いのでした。よだかは遠い空の向こうへ行ってしまおうと決意します。


よだかは空高く飛び上がり、その体は美しい光を放ちながら燃え、星になって今も燃え続けています。

 

  •  作者は宮沢賢治(明治29年~昭和8年)

    岩手県の花巻の生まれ。詩人であり童話作家

    イーハトーブ」を舞台に数多くの作品を残しました。「イーハトーブ」とは、郷土の岩手をモチーフに賢治が心のなかに描いた理想郷。


  • 主人公「よだか」とは、「ヨタカ」(ヨタカ目ヨタカ科)という鳥のこと。

    漢字では「夜鷹」と書きます。

    夜行性で、日本では夏の渡り鳥です。


  • よだかの星』に登場するのは、鳥や星。

    人間がいっさい登場しない代わりに、「擬人法」が効果的に使われています。

    鳥や星の世界が描かれているように見えますが、実際には、人間の世界がおもしろおかしく表現されています。

    「これがもしも人間だったら……」と想像しながら読むおもしろさがあります。

 

 

 

よだかの星』の魅力

 

①仲間はずれの「よだか」

 

○主人公・「よだか」について

 

よだかは生まれつき、みにくい姿をした鳥です。

顔はまだら模様で、口は耳まで裂けていて、足はよぼよぼ、ろくに歩けません。

ほかの鳥たちからは、会うたびに顔をそむけられたり、悪口を言われたりするほどのみにくさなのです。

 

たかからのいじめ

 

周りの鳥たちから差別されているよだか。

その上、鷹からはいじめを受けます。


ある夕方、鷹がやって来て、よだかに名前を変えろと迫ってきます。

「たか」という名前が自分とかぶっているから、「市蔵いちぞう」という名前に変えろというのです。


鳥なのに、人間の名前をつけられるのですから、とても差別的ないじめです。

名前を「市蔵」に変えなければ、つかみ殺す。

鷹はよだかにそう告げます。


鳥として扱われず、名前を奪われる。

従わなければ殺される。

よだかへのいじめは、存在そのものの否定、つまり殺しにまで行き着くのです。

 

②よだかの嘆き

 

よだかが感じたのは、自分という存在の身の置き所のなさ。

自分はほかの鳥たちとは違う、ここに自分の居場所はない、という意識です。


下に引用するのは、『よだかの星』のなかで最も悲痛な場面です。

 

だかが思い切って飛ぶときは、そらがまるで二つに切れたように思われます。一ぴき甲虫かぶとむしが、夜だかの咽喉のどにはいって、ひどくもがきました。よだかはすぐそれを呑みこみましたが、その時何だかせなかがぞっとしたように思いました。

(中略)

また一疋の甲虫が、夜だかののどに、はいりました。そしてまるでよだかの咽喉をひっかいてばたばたしました。よだかはそれを無理にのみこんでしまいましたが、その時、急に胸がどきっとして、夜だかは大声をあげて泣き出しました。泣きながらぐるぐるぐるぐる空をめぐったのです。
(ああ、かぶとむしや、たくさんの羽虫が、毎晩僕に殺される。そしてそのただ一つの僕がこんどはたかに殺される。それがこんなにつらいのだ。ああ、つらい、つらい。僕はもう虫をたべないでえて死のう。いやその前にもう鷹が僕を殺すだろう。いや、その前に、僕は遠くの遠くの空の向うに行ってしまおう。)

『新編 銀河鉄道の夜』(宮沢賢治/著 新潮文庫)収録「よだかの星」より引用

 

よだかは、自分よりも弱い虫たちを食べることで生きています。

しかしその自分も、鷹に殺される運命。

虫たちを殺すことも辛いが、鷹に殺されることも辛い。


このような存在のやりきれなさが、よだかにはたまらなく辛いのです。

よだかは遠い空の向こうへ行ってしまおうと決意します。

 

③自分の本当の居場所

 

○星になった「よだか」

 

遠い空の向こうへ行ってしまおうと決意したよだかは、天上にある、星の世界を目指します。

よだかは力の限り羽ばたき、空高く飛び上がりました。

そして、よだかの体は美しい青色の火に包まれ、星になったのでした。


よだかの星』は、嫌われ者のよだかが、世の中に絶望して自ら命を絶ってしまう話のように思われるかもしれません。


しかし、ここで注目したいのは、よだかが星に変化したこと。

よだかの星』は、よだかが星の世界のなかに自分の本当の居場所を見つけ出す物語なのです。


生まれたときの環境は選べません。

生まれや外見などから、理不尽に差別され、いじめられることもあります。


その辛さのなかで、よだかは、自分とは何者なのか、自分の本当の居場所はどこにあるのか、と考えます。


そして星の世界にたどり着くのです。


自分の今いる場所が、本当の居場所とは限りません。

本当の居場所は、自分自身と向き合い、新しい一歩を踏み出した先にあるのかもしれませんね。


よだかの星』は、暗く辛い現実の向こうに明るい未来があることを教えてくれる、ひとつのともし火のようです。

 

 

 

まとめ

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宮沢賢治の童話作品『よだかの星』は、差別やいじめの根深さを描いた作品です。

しかし、決して絶望的には描かれておらず、ひとつの明るい可能性を暗示しているところに魅力があります。


自分が何者なのかを知り、本当の居場所を獲得するために必死で羽ばたく「よだか」。

その姿にとても勇気づけられます。


気になった人は、ぜひ本を手に取ってみてくださいね。

※「よだかの星」は『新編 銀河鉄道の夜』(宮沢賢治/著 新潮文庫)に収録されている一編です。

 

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