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落ち込んだ時に読みたい『銀河鉄道の夜』の名言集

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宮沢賢治銀河鉄道の夜』の名言紹介

 

 こんにちは、『文人』です。


暗い気分になり、希望が持てなくなったとき。

人間関係で辛い思いをしたとき。

そんなふうに落ち込んだときは、ちょっとの間、現実を忘れたくなりますよね。


現実も、時間も忘れて、何かに没入したいときにおすすめなのが、

宮沢賢治の名作『銀河鉄道の夜

主人公「ジョバンニ」と、親友「カムパネルラ」が、夜空を走る銀河鉄道に乗って旅をするお話です。


今回はそんな銀河鉄道の夜』のなかの名言をわかりやすく紹介していきます。

 

 

 

 

名言①
ジョバンニは、ばっと胸がつめたくなり、そこら中きぃんと鳴るように思いました。

 

「ジョバンニ、お父さんから、らっこの上着が来るよ。」その子が投げつけるようにうしろから叫びました。
ジョバンニは、ばっと胸がつめたくなり、そこら中きぃんと鳴るように思いました。

『新編 銀河鉄道の夜』(宮沢賢治/著 新潮文庫)所収「銀河鉄道の夜」より引用

 

主人公「ジョバンニ」は、貧しさと孤独を抱えた少年です。

父親は海へ漁に出かけたきり帰らず、母親は病気で寝ている。

「ジョバンニ」は辛い仕事をしながら学校に通っています。

そのため気持ちが落ち込み、前のように学校の友達と遊んだり話したりすることも減っているのです。


「らっこの上着」は、父親が帰ったら「ジョバンニ」にプレゼントしようと約束したもの。

それを、学校のみんなが冷やかしの種にしています。

「らっこの上着が来るよ」

とからかわれるのが、「ジョバンニ」には特に辛いのです。


父親と会えない辛さ。

こちらの気持ちも知らずに、父親のことを冷やかし、自分が困るのを見ておもしろがっている、そんな無邪気なクラスメイトたち。


「ジョバンニ」が感じているのは、周りの人に理解してもらえず、冷たく突き放されたときの、言いようのない哀しみと寂しさです。

 

名言②
カムパネルラは気の毒そうに、だまって少しわらって、怒らないだろうかというようにジョバンニの方を見ていました。

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「ジョバンニ、らっこの上着が来るよ。」すぐみんなが、続いて叫びました。ジョバンニはまっ赤になって、もう歩いているかもわからず、急いで行きすぎようとしましたら、そのなかにカムパネルラが居たのです。カムパネルラは気の毒そうに、だまって少しわらって、怒らないだろうかというようにジョバンニの方を見ていました。

『新編 銀河鉄道の夜』(宮沢賢治/著 新潮文庫)所収「銀河鉄道の夜」より引用

 

「カムパネルラ」は、「ジョバンニ」の小さい頃からの親友。

友だち思いの、心優しい少年です。


学校のみんなが「ジョバンニ」の悪口を言うとき、「カムパネルラ」だけは何も言いません。


「ジョバンニ」にとって、「カムパネルラ」は特別な友人。

だから「ジョバンニ」は、友人に気を遣わせているのを辛く感じています。

「ジョバンニ」は、気の毒そうに見てくる「カムパネルラ」を避け、みんなから離れていきます。

そうして独り、寂しい気持ちになるのでした。


親友との関係は、ふつうの友人知人とは何となく違うところがありますね。

お互いに、ほかの誰よりも気を遣い合っています。

でも、2人でいるときは、心が軽くなり、時間を忘れてどんな話でも打ち明けられる。


「ジョバンニ」は、ほんとうは「カムパネルラ」と2人で話がしたかったのでしょう。

 

 

 

名言③
するとどこかで、ふしぎな声が、銀河ステーション、銀河ステーションと云う声がしたと思うと……

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するとどこかで、ふしぎな声が、銀河ステーション、銀河ステーションとう声がしたと思うといきなり眼の前が、ぱっと明るくなって、まるで億万の蛍烏賊ほたるいかの火を一ぺんに化石させて、そら中に沈めたという工合ぐあい、またダイアモンド会社で、ねだんがやすくならないために、わざとれないふりをして、かくして置いた金剛石こんごうせきを、たれかがいきなりひっくりかえして、ばら撒いたという風に、眼の前がさあっと明るくなって、ジョバンニは、思わず何べんも眼をこすってしまいました。

『新編 銀河鉄道の夜』(宮沢賢治/著 新潮文庫)所収「銀河鉄道の夜」より引用

 

「カムパネルラ」たちと別れた「ジョバンニ」は、寂しさを抑えきれず、走り出しました。


行き着いたところは、町はずれの丘。

「ジョバンニ」は草の上に寝そべり、天の川銀河の浮かぶ夜空をながめます。


そこで、不思議な体験をします。

「銀河ステーション」というアナウンスの声と、まぶしい光にのみこまれ、気がつくと、夜空を走る銀河鉄道に乗っていたのです。


現代よりも光が乏しい時代。

星空に淡く照らされた夜、林や草が真っ黒に見渡せる、静かな丘の上。

そこへいきなり、見たこともない幻想的な光がぱっと広がったら、相当びっくりするでしょうね。


銀河鉄道の夜』はさまざまな美しい光が目の前をかすめていく世界です。

光というものが、この作品では心の豊かさの象徴として描かれているように感じます。

 

名言④
「僕はあの人が邪魔なような気がしたんだ。だから僕は大へんつらい。」

 

「僕はあの人が邪魔なような気がしたんだ。だから僕は大へんつらい。」(中略)

『新編 銀河鉄道の夜』(宮沢賢治/著 新潮文庫)所収「銀河鉄道の夜」より引用

 

「ジョバンニ」の乗った銀河鉄道には、親友の「カムパネルラ」の姿がありました。

2人は一緒に銀河鉄道の旅をします。


「ジョバンニ」たちは汽車のなかで、鳥捕りの男と出会います。

ぼろの服を着て、背中が曲がり、赤い髭を生やした奇妙な人物です。

鳥をつかまえて、食べ物として売る仕事をしています。


鳥捕りは周囲から変な眼で見られています。

「ジョバンニ」たちには、鳥捕りのことがよく理解できません。

鳥捕りが姿を消してどこかへ行ってしまった後、「ジョバンニ」は気の毒そうに言います。


「僕はあの人が邪魔なような気がしたんだ。だから僕は大へんつらい。」


調子が合わない人間と出会ったとき、避けたくなる気持ち。

それを「ジョバンニ」は知ったのかもしれません。


辛く感じるのは、相手がかわいそうで、自分が何か悪いことをしているようだから。

他者と通じ合えないことは、それだけで辛いことなのです。

 

名言⑤
ぼくはそのひとのさいわいのためにいったいどうしたらいいのだろう。

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(ああ、その大きな海はパシフィックというのではなかったろうか。その氷山の流れる北のはての海で、小さな船に乗って、風や凍りつく潮水や、烈しい寒さとたたかって、たれかが一生けんめいはたらいている。ぼくはそのひとにほんとうに気の毒でそしてすまないような気がする。ぼくはそのひとのさいわいのためにいったいどうしたらいいのだろう。

『新編 銀河鉄道の夜』(宮沢賢治/著 新潮文庫)所収「銀河鉄道の夜」より引用

 

「ジョバンニ」たちの汽車に、新しい乗客が現れます。

幼い姉弟を連れた青年です。

ここへ来る前、彼らは客船に乗っていました。


青年は語ります。


自分たちの乗っていた船が氷山にぶつかって沈んだこと。

自分はこの幼い姉弟の家庭教師であること。

幼い姉弟を必死に助けようとしたが、救難ボートのところには小さな子どもたちがいて、とても押しのける気持ちになれなかったこと。

覚悟を決めて、幼い姉弟をしっかり抱いて、3人で渦にのまれて沈んだこと。


その話を聴くと、「ジョバンニ」は彼らに同情せずにはいられないのでした。


遠くの見えないところで、生命を燃やすように働いている人がいる。

極限の状況のなか、命の選択に迫られて、他者を助けるために自分を犠牲にする人がいる。


そういう人たちに対して何をしてあげたらいいのか。

「ジョバンニ」は苦悩します。


生きることの苦悩には、

「自分は他者のためにどう生きられるのか」

という問題もふくまれています。

 

名言⑥
どうして僕はこんなにかなしいのだろう。

 

どうして僕はこんなにかなしいのだろう。僕はもっとこころもちをきれいに大きくもたなければいけない。あすこの岸のずうっと向うにまるでけむりのような小さな青い火が見える。あれはほんとうにしずかでつめたい。僕はあれをよく見てこころもちをしずめるんだ。)

『新編 銀河鉄道の夜』(宮沢賢治/著 新潮文庫)所収「銀河鉄道の夜」より引用

 

一緒に銀河鉄道の旅をする親友「カムパネルラ」は、途中で仲良くなった幼い女の子とばかり話しています。

それが「ジョバンニ」にはおもしろくないのです。


「ジョバンニ」は独りぼっちになり、哀しくなります。

嫌な気持ちが高ぶってくるのを抑えるために、車窓から顔を出して、向こうに広がる天の川銀河をみつめます。


たとえ親友と一緒にいるときでさえ、どうかすると心がすれ違い、言いようのない哀しみにとらわれます。

この気持ちを鎮めるためには、ただ遠くをみつめることです。

星々を見上げ、さまざまな物語を空想していた昔の人も、同じ気持ちを抱えていたのかもしれませんね。

 

名言⑦
僕はもうあのさそりのようにほんとうにみんなのさいわいのためならば僕のからだなんか百ぺんいてもかまわない。

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「(中略)僕はもうあのさそりのようにほんとうにみんなの幸のためならば僕のからだなんか百ぺん灼いてもかまわない。」

『新編 銀河鉄道の夜』(宮沢賢治/著 新潮文庫)所収「銀河鉄道の夜」より引用

 

銀河鉄道の長い道中を一緒に過ごした青年と幼い姉弟とも、お別れのときが来ました。

3人は「サザンクロス」という駅に降り立ち、天の川に立つ十字架の前にひざまずきました。


やがて動き出す汽車。

十字架は後ろに遠ざかっていきます。


「ジョバンニ」と「カムパネルラ」はまた2人きりになりました。


「ジョバンニ」はみんなの「ほんとうの幸」を探す決意をします。

「さそり」とは、天の川に浮かぶさそり座のこと。

「さそり」は夜を照らすために、自分の体を燃やしています。

「ジョバンニ」は「さそりのように」みんなのために働こうと考えたのです。


「ジョバンニ」は銀河鉄道の旅を通して、さまざまな優しい死者たちと関わりました。

生きている者も、亡くなった者もみんな含めて、すべての他者とのつながりを強く感じたのでしょう。

 

名言⑧
「カムパネルラ、僕たち一緒に行こうねえ。」

 

「カムパネルラ、僕たち一緒に行こうねえ。」ジョバンニがいながらふりかえって見ましたらそのいままでカムパネルラの座っていた席にもうカムパネルラの形は見えずただ黒いびろうどばかりひかっていました。ジョバンニはまるで鉄砲玉のように立ちあがりました。そしてたれにも聞えないように窓の外へからだを乗り出して力いっぱいはげしく胸をうって叫びそれからもう咽喉のどいっぱい泣きだしました。もうそこらが一ぺんにまっくらになったように思いました。

『新編 銀河鉄道の夜』(宮沢賢治/著 新潮文庫)所収「銀河鉄道の夜」より引用

 

汽車で2人きりになった「ジョバンニ」と「カムパネルラ」。

どこまでも一緒に行こうと約束します。


ところが、「カムパネルラ」の姿はいつのまにか消えてしまい、「ジョバンニ」は独りになります。


……気がつくと、「ジョバンニ」は丘の上に寝ていました。

町のなかへ戻ると、川に人だかりができています。


「ジョバンニ」は、「カムパネルラ」が友だちを助けるために川へ入っておぼれたことを知りました。

銀河鉄道の夢は、「カムパネルラ」との最期のお別れだったのです。


銀河鉄道の中で、「ジョバンニ」はあふれ出る感情を全部しぼり出すように泣きます。

その声は誰にも聞かれず、夜空へ吸い込まれていきます。


内気で独りになる癖のある「ジョバンニ」にとって、銀河鉄道の世界は、他者とつながり、自分自身の心と向き合うための場所だったのかもしれません。

 

 

 

まとめ

 

宮沢賢治の名作『銀河鉄道の夜』には、大切な親友をはじめ、さまざまな優しい人々の死が描かれています。


言葉づかいが美しく、言葉ひとつひとつに深みがあり、心に強く訴えかけてくるのが魅力です。


あなたもぜひ『銀河鉄道の夜』の中から自分だけの名言集を編んでみてください。

落ち込んだ時だからこそ共感できる言葉が、きっと見つかりますよ。

 

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