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人生で一度は読みたい夏目漱石『こころ』の名言集

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夏目漱石『こころ』の名言紹介

 

こんにちは、『文人』です。


夏目漱石の晩年の代表作『こころ』。

「先生」と、その親友「K」が、下宿先のお嬢さんを好きになる。

そんな恋の話が印象的ですよね。


『こころ』は切ない恋の苦しみを描きながら、同時に、人間の弱さをえぐり出した小説です。

静かな言葉の裏に、ぞっとするほど深い、人間への問いかけがあります。

人生で一度は通読したい日本文学の名作ですね。



今回はそんな夏目漱石『こころ』の名言をわかりやすく紹介していきます。

 

 

 

 

名言①
私はその人を常に先生と呼んでいた。

 

わたくしはその人を常に先生と呼んでいた。

『こころ』(夏目漱石/著 新潮文庫)より引用

 

 『こころ』は、語り手の「私」と主人公「先生」との交流を描いた小説です。


当時まだ若々しい学生だった「私」。

鎌倉の海で「先生」と出会います。

「私」は出会ったばかりのその人を、いきなり「先生」と呼びます。

そうして「私」と「先生」との交流が始まるのです。


「先生」は、勉強や社会常識といったようなものは教えてくれません。

「先生」の口から語られるのは、「先生」自身の生々しい体験から得られた教訓。

それを「私」にだけ打ち明けて、「先生」は自殺してしまうのです。


先生とは、文字通り「先」に「生」まれた人のこと。

人生で大切なことは、信頼する人間から直接学びます。

「私」にとっての「先生」のように。

 

名言②
「貴方は死という事実をまだ真面目に考えた事がありませんね」

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貴方あなたは死という事実をまだ真面目まじめに考えた事がありませんね」

『こころ』(夏目漱石/著 新潮文庫)より引用

 

「私」が「先生」と一緒に雑司ヶ谷の墓地を歩いていたときのこと。

変わった名前の墓標や、さまざまな形の墓石が並んでいます。

それらを見ながら、おもしろそうに冷やかす「私」に対して、「先生」が言った台詞です。


「先生」は月に一度、必ず友人の墓へ行きます。

「先生」に言わせれば、死は「事実」なのです。

死というものを生活のなかに含み、自分もまた死ぬべきものとして考えています。


当たり前のように生きていると、死という考えは浮かんできません。

自分も、周りの人間も、いつか死ぬもの。

常にそういう眼で見ている「先生」は、人生を真面目に生きている人です。

 

 

 

名言③
人間を愛し得る人、愛せずにはいられない人、それでいて自分の懐に入ろうとするものを、手をひろげて抱き締める事の出来ない人、――これが先生であった。

 

人間を愛し得る人、愛せずにはいられない人、それでいて自分のふところに入ろうとするものを、手をひろげて抱き締める事の出来ない人、――これが先生であった。

『こころ』(夏目漱石/著 新潮文庫)より引用

 

「先生」は美しい奥さんと暮らしています。

見た目には仲の良い夫婦なのに、「先生」はどこか奥さんを遠ざけようとしている。


「私」はそんな「先生」に近づこうとしますが、距離を取られ、物足りなく感じます。


「先生」は、ほんとうは愛情の深い人です。

でも、自分から心を開くことができず、身動きが取れなくなっているのです。


お互いに傷つけたり、傷つけられたりするのが人間関係。

他人同士でいるうちは平気です。

でも、愛情が絡むと、平常心ではいられなくなる。


相手を抱き締めることのできない人もいます。

 

名言④
然し……然し君、恋は罪悪ですよ

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「(中略)しかし……然し君、恋は罪悪ですよ。(中略)」

『こころ』(夏目漱石/著 新潮文庫)より引用


「私」と「先生」が2人で上野を歩いているときのことです。


花の季節で、美しい男女のカップルが寄り添っています。

その姿をながめながら、冷やかしの言葉を述べる「私」。


身近な異性のいない「私」の態度には、うらやむ気持ちがあったのでしょう。

それを察した「先生」は言います。

「恋は罪悪ですよ」


なぜ恋が「罪悪」なのか。

「先生」の口から出た言葉に、「私」は驚きます。


恋は自分の欲望を満たそうとするために起こる気持ちです。

欲に駆られると、ふだんの自分では思いもよらないような、残酷なこともできてしまう。

恋には自己嫌悪が付きまといます。

 

名言⑤
あなたの心はとっくの昔から既に恋で動いているじゃありませんか

 

「何故だか今に解ります。今にじゃない、もう解っているはずです。あなたの心はとっくの昔からすでに恋で動いているじゃありませんか

『こころ』(夏目漱石/著 新潮文庫)より引用

 

なぜ恋が「罪悪」なのかと尋ねる「私」に対して、「先生」はこう言うのです。


物足りない気持ちがあるから、他人に近づいていく。

「私」が「先生」に近づこうとするのも、恋なのだ。

異性に向かう前の段階として、まず同性に向かっていく。

――「先生」はそのように説明します。


恋とは、異性に向かう気持ちばかりではありません。

物足りなさ、心の虚しさを埋めるために、他者へ近づこうとする気持ち。

それも広い意味では恋なのです。

 

 

 

名言⑥
「私は私自身さえ信用していないのです。つまり自分で自分が信用出来ないから、人も信用できないようになっているのです。自分を呪うより外に仕方がないのです」

 

「私は私自身さえ信用していないのです。つまり自分で自分が信用出来ないから、人も信用できないようになっているのです。自分を呪うよりほかに仕方がないのです」

『こころ』(夏目漱石/著 新潮文庫)より引用

 

「先生」は人間というものを信用していません。

なぜそのような心を持つようになったのか?

「私」が尋ねても、「先生」は多くを語ってくれません。



「先生」は過去に自分がやったことを、今でも恐れています。

真面目な「先生」は、自分自身のことを信用できないために、誰とも深く関われず、世間に背を向けているのです。

 

名言⑦
平生はみんな善人なんです、少なくともみんな普通の人間なんです。それが、いざという間際に、急に悪人に変るんだから恐ろしいのです。

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「(中略)平生へいぜいはみんな善人なんです、少なくともみんな普通の人間なんです。それが、いざという間際まぎわに、急に悪人に変るんだから恐ろしいのです。(中略)」

『こころ』(夏目漱石/著 新潮文庫)より引用

 

世の中に悪人という人種が存在しているわけではない。

普通の善人が、「いざという」とき、悪人に変わってしまうのだ。

「先生」は確信のこもった口調で、「私」にそう言います。


自分中心の考えにとらわれたとき、他人を顧みず、残酷な行動をとってしまう。

人間に備わっている利己的な一面。

善人から悪人への心変わり。

人間のそういうところが、「先生」には恐ろしいのです。

 

名言⑧
あなたは腹の底から真面目ですか

 

「(中略)私は死ぬ前にたった一人で好いから、ひとを信用して死にたいと思っている。あなたはそのたった一人になれますか。なってくれますか。あなたは腹の底から真面目ですか

『こころ』(夏目漱石/著 新潮文庫)より引用

 

人間を信用していない「先生」は、「私」に対しても疑いを向けています。

しかし、本当は人を信用したい。

頭では人を疑い、心では人を信じたい、という矛盾に揺らいでいる「先生」。


そんな「先生」の切実な思いが込められた名言です。


どんなに疑い深くなっても、やはり他人を信用せずにはいられない。

それが人間の弱みです。

他人を受け入れると同時に、自分も受け入れてほしい。

他を必要とするのが人間です。

 

名言⑨
精神的に向上心のないものは、馬鹿だ

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『精神的に向上心のないものは、馬鹿だ』

『こころ』(夏目漱石/著 新潮文庫)より引用

 

学生時代の「先生」には、「K」という親友がいました。


「K」は優秀で、禁欲的で、向上心の塊のような人間。

恋愛にまったく関心がないどころか、軽蔑すらしている。


一方、当時の「先生」は下宿先のお嬢さんに恋をしていました。


性格がまったく異なる「先生」と「K」。


あるとき「先生」は、「K」から、

精神的に向上心のないものは馬鹿だ

と言われてしまいます。


ところが、その「K」も、やがて下宿先のお嬢さんに恋をしてしまうのです。


「先生」は「K」に嫉妬し、お嬢さんを自分のものにしたいと考えます。

そしてある日、「先生」は「K」に向かって言うのです。

精神的に向上心のないものは、馬鹿だ


以前、「K」から言われたことを、やり返しました。

けれどもそれは、ただの仕返しではありません。

「K」に恋をあきらめさせ、自分がお嬢さんを独占するため。

そのために、「K」にとって最も痛いであろう台詞を突きつけたのです。


最終的に、「K」は自殺してしまいました。


自分中心の考えにとらわれると、他人を思いやることができなくなります。

そんな時、自分でも意外なくらい残酷なことをしてしまう場合があります。

たとえ相手が親友であっても。

 

名言⑩
私はただ人間の罪というものを深く感じたのです

 

私はただ人間の罪というものを深く感じたのです。

『こころ』(夏目漱石/著 新潮文庫)より引用

 

「先生」は遺書のなかで、こう述懐しています。


「先生」は「K」に対する自分の罪と深く向き合います。

自分中心の考えにとらわれ、心変わりして、親友を自殺へ追い込んでしまった自分。

このような利己的な心の動きは、すべての人間に共通しているものです。

つまり、生まれた時から人間が背負っている罪だといえます。


悪いことをしたという自覚がなければ、罪を感じることはできませんよね。

だから最初は、罪とはいえないような小さな罪を重ねてしまうもの。

そして問題が大きくなってから、ようやく自分の罪に気づきます。

しかし、場合によってはもう取り返しがつきません。


「先生」はそんな取り返しのつかない罪に苦しみ続けました。

そして自分で自分を罰するだけでは済まず、生命を絶つところまで行き着いてしまうのです。

 

 

 

まとめ

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恋に苦しんだ結果、お嬢さんを独占するため、そして自分が幸せになるために、親友「K」を自殺へ追い込んでしまった「先生」。

お嬢さんと結婚したあとも、罪の意識に苦しみ続け、「先生」は孤独を抱えながら自殺します。


個人の自由や幸せを求める一方で、

「あれ、何かおかしい」

という感覚もある。


自分の欲求を満たそうとする行為が、ときに自分も他人も傷つける結果になってしまう。


どんな人間にも罪を犯してしまう弱さがあるのだと知ること。

そして自分自身の「こころ」とじっくり向き合うこと。

「先生」が命をかけて教えてくれた教訓を大事にして、「自殺」ではない、痛みを分かち合って他者とつながる「こころ」を持ちたいですね。


興味を持ったら、ぜひ本を手に取ってみてください。

 

 

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