愛と想像力をくすぐる名作――『星の王子さま』(サンテグジュペリ)の魅力
こんにちは、『文人』です。
『星の王子さま』は、フランスの作家・サンテグジュペリの代表作。
詩のように美しい文章と、可愛らしい挿し絵で、世界中の読者に愛されている作品です。
子供向けの本に見えますが、大人も愉しめる世界文学の名作です。
この記事では、そんな『星の王子さま』の内容と魅力をわかりやすく紹介していきます。
『星の王子さま』とは?
沙漠の真っ只中に不時着した飛行士の前に、不思議な金髪の少年が現れ「ヒツジの絵を描いて……」とねだる。少年の話から彼の存在の神秘が次第に明らかになる。バラの花との諍いから住んでいた小惑星を去った王子さまはいくつもの星を巡った後、地球に降り立ったのだ。王子さまの語るエピソードには沙漠の地下に眠る水のように、命の源が隠されている。生きる意味を問いかける永遠の名作の新訳。
『星の王子さま』(サンテグジュペリ/著 池澤夏樹/訳 集英社文庫)裏表紙の紹介文より引用
- 作者は20世紀フランスの作家アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ。
ほかにも、『夜間飛行』『人間の土地』などの作品があります。 - 1943年に出版。原題は『Le Petit Prince』。
日本で初めて出版されたのは、1953年。
岩波書店から、内藤濯/訳による『星の王子さま』というタイトルで出ました。
その後、さまざまな翻訳が出ています。
『星の王子さま』の魅力
『星の王子さま』はとある飛行士と「王子さま」との出会いと別れを描いた物語です。
飛行機が沙漠に不時着してしまった飛行士の前に、不思議な少年「王子さま」が現れます。
「王子さま」は別の星から来ました。
「王子さま」はここへ来るまでに経験したさまざまな出来事を、少しずつ語ってくれます。
①5000本のバラ
地球に来る前、王子さまは1本のバラと一緒に暮らしていました。
このバラは、とてもきれいなのですが、わがままで見栄っ張りなところがあり、王子さまを困らせます。
ちょっとしたことで機嫌をそこねたり、わざと困らせるようなことをしたり、何かと世話を焼かせるのです。
それでも、このバラは、自分だけの特別な花。
そう信じて、王子さまは一生懸命に世話をします。
しかし、バラとの関係がこじれてしまい、王子さまは旅に出たのでした。
地球に降り立った王子さまは、ある光景にショックを受けます。
それは、庭園に咲き乱れる5000本のバラの花。
世界に1本だけだと信じていたバラの花が、目の前に5000本もある!
自分の愛したバラは、たくさんのうちのただの1本に過ぎなかったのです。
王子さまは傷つき、自信を失います。
②キツネとの出会い
王子さまの傷ついた心を救ったのが、1匹のキツネです。
キツネは、王子さまに絆を教えます。
絆とは何か。
キツネは言います。
「いいかい、きみはまだおれにとっては10万人のよく似た少年たちのうちの一人でしかない。きみがいなくたって別にかまわない。おんなじように、きみだっておれがいなくてもかまわない。きみにとっておれは10万匹のよく似たキツネのうちの1匹でしかない。でも、きみがおれを飼い慣らしたら、おれときみは互いになくてはならない仲になる。きみはおれにとって世界でたった一人の人になるんだ。おれもきみにとって世界でたった1匹の……」
『星の王子さま』(サンテグジュペリ/著 池澤夏樹/訳 集英社文庫)
王子さまとキツネは、絆がなければ、お互いにたくさんのうちの1人と1匹でしかない。
でも、絆があれば、お互いが特別でかけがえのない存在になる。
王子さまはもう一度、庭園に植えられた5000本のバラに会いに行きます。
5000本の彼女たちと、自分の愛したあの1本のバラは違う。
星に残してきた、あの1本のバラは、自分にとって特別でかけがえのない1本だったのだ。
王子さまはそう確信するのです。
1本のバラが咲いているおかげで、夜空にまたたく星すべてがきれいに見える。
やがて王子さまは、自分の星に帰っていきます。
③約77憶人のうちの1人
このエピソードを現実に置き換えて考えてみると、どうでしょうか。
私たちは約77憶人のうちの1人として存在し、大量生産されたものに囲まれて生活しています。
だからこそ、
「あれ、自分がいなくても世の中は回っていくんじゃないか?」
「恋人とうまくいかないな、もう別れよ。(男なんて)(女なんて)たくさんいるんだし、他にもっと良い人がいるよね」
と、ふとした瞬間に考えて、何となく寂しいような、虚しいような気持ちになることがあります。
5000本のバラに傷ついた王子さまのようなことは、実際、私たちの生活のなかでも起こり得るのです。
5000本のバラに惑わされず、自分にとって特別でかけがえのない1本のバラを大切にすること。
その1本のバラが、自分の世界を彩ってくれること。
『星の王子さま』の物語には、愛情を持ち、想像力を働かせながら生きることの大切さが、切実に描かれていると感じます。
おわりに
生活が味気なく、毎日同じことばかりしているような気がする。
何のために生きているのか、自分は本当に必要とされているのか、わからない。
ふと、そんなふうに感じることがありますよね。
『星の王子さま』は、そういうときにこそ読みたくなる本です。
飛行士が不時着した沙漠を、自分のいる環境に置き換えてみたり。
王子さまの愛するバラを、身のまわりの人やものに置き換えてみたり。
そのように想像をめぐらせながら、何度でも読み返してみるのがおすすめです。
まだ読んだことのない人は、ぜひ本を手に取って、物語に触れてみてください。
きっと毎日が光って見えるようになりますよ。
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