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人生に悩んだ時に読みたい夏目漱石『三四郎』の名言集

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こんにちは、『文人』です。


夏目漱石の『三四郎』は、『坊っちゃん』『こころ』と並んで人気の高い名作小説です。

主人公は九州から上京してきた学生「三四郎」。

同年代の美しい女性とのほろ苦い恋。

新しい時代へ向かって生きていくことの迷いや不安。


三四郎』は恋愛や進路などの身近なテーマで書かれており、現代を生きる私たちにも共感しやすい小説です。

主人公を取り巻くキャラクターたちはみんな個性的。

面白くて共感できる名言がたくさん散りばめられています。


今回はそんな三四郎』のなかの名言を紹介していきます。

 

 

名言①
「あなたはよっぽど度胸のない方ですね」

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「あなたはよっぽど度胸のない方ですね」

三四郎』(夏目漱石/著 岩波文庫)より引用

 

主人公「三四郎」は、熊本の高等学校を卒業して、東京帝国大学の文科(今の東大文学部)へ進学するために上京してきた青年です。

上京するため汽車に乗っていた「三四郎」は、その途中で、未亡人の女と連れ合いになります。


思いがけず、その女と二人きりで宿に泊まることに。

狭い部屋に布団は1枚。

女と一緒に寝る状況になり、困惑する「三四郎」。

結局、布団の真ん中に仕切りを作り、最後まで女を寄せつけませんでした。


そして一夜明け、別れのとき、女は「三四郎」に言うのでした。

あなたはよっぽど度胸のない方ですね


出会ったばかりの女から、まさかの強烈な一言。

人生のなかで、言葉の影響力は大きいですよね。

ある言葉がトラウマになり、後々まで尾を引くことがあります。

三四郎」が受けた一言も、そういう言葉です。

 

名言②
「日本より頭の中の方が広いでしょう」

「日本より頭の中の方が広いでしょう」といった。「とらわれちゃ駄目だ。いくら日本のためを思ったって贔屓ひいき引倒ひきだおしになるばかりだ」

三四郎』(夏目漱石/著 岩波文庫)より引用

 

上京する汽車で出会った「広田先生」の言葉です。


富士山のほかに、日本が自慢できるものはない。

日本は亡びる。

「広田先生」はこんなことを言って、「三四郎」をびっくりさせます。


ひとつの国にとらわれず、個人として自由に生きる。

三四郎」は「広田先生」を通じて、新しい時代の空気を感じます。


一事にとらわれると、ものの見方も考え方も、狭く偏ってしまいがちです。

社会、国、グループ……何かに所属している以上、とらわれてしまうのは仕方のないこと。

でも、人間は考える個人だということも、忘れないようにしたいですね。

 

 

 

名言③
そうして現実の世界は、かように動揺して、自分を置き去りにして行ってしまう。

(中略)世界はかように動揺する。自分はこの動揺を見ている。けれどもそれに加わる事は出来ない。自分の世界と、現実の世界は一つ平面に並んでおりながら、どこも接触していない。そうして現実の世界は、かように動揺して、自分を置き去りにして行ってしまう。(中略)

三四郎』(夏目漱石/著 岩波文庫)より引用

 

東京に着いた「三四郎」は、街の大きさ、活動の激しさに圧倒されます。

自分が今まで過ごしてきた田舎とはまったく違う。

しかし東京に出てきたからといって、いきなり社会の活動のなかに入っていけるわけではない。

まだ学生である自分は、外から見ていることしかできない。

三四郎」は上京してまもなく、不安になり、気持ちが沈みます。


近代社会は、個人が主役の時代といってもいいでしょう。

社会のなかで活躍する個人がいる一方で、置き去りにされていく個人もいます。

まるで社会から切り離されたような、不安、孤独を感じやすい。


日々、更新されていくニュース、移り変わっていくトレンド。

社会の変化に追いつけず、振り落とされてしまうのではないか、という恐さがありますよね。

 

名言④
迷える子ストレイ シープ――解って?」

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「迷子」
女は三四郎を見たままでこの一言ひとこと繰返くりかえした。三四郎は答えなかった。
「迷子の英訳を知っていらしって」
三四郎は知るとも、知らぬともいい得ぬほどに、このといを予期していなかった。
「教えて上げましょうか」
「ええ」
迷える子ストレイ シープ――解って?」

三四郎』(夏目漱石/著 岩波文庫)より引用

 

三四郎」は「美禰子みねこ」という若い美しい女性と知り合います。

洗練された都会の人で、男も顔負けするほどの知識があり、社交にも慣れている。

田舎の女性とはまったく異なる、新しいタイプの女性である「美禰子」。


思わせぶりな態度や、謎めいた言動に振り回されながらも、「三四郎」は、しだいに「美禰子」に魅了されていきます。


「ストレイ シープ」

なぜいきなりそんな言葉を口にしたのか?

戸惑う「三四郎」。


相手のことがわからないからこそ、知りたくなる。そして惹かれていく。

慣れない異性との関わりが印象的に描かれています。

 

名言⑤
――君、露悪家ろあくかという言葉を聞た事がありますか

「(中略)――君、露悪家という言葉を聞た事がありますか」

三四郎』(夏目漱石/著 岩波文庫)より引用

 

高等学校で教師をしている「広田先生」は、あるとき、「三四郎」にそう問いかけます。

「露悪家」というのは、そもそも「広田先生」の造語。

「露悪家」は、自分の悪いところを包み隠さず表に出して、好き勝手に振る舞う。

そうして開き直っている。

「広田先生」に言わせれば、「三四郎」も、周りの人間も、みんな「露悪家」だそうです。


「世のため人のため」

という綺麗事は、口にすると、何だか嘘っぽくて落ち着きません。

本当に自分の言葉なのか、不安になりますよね。

だから個人として振る舞おうとするとき、自分を主張したり表現したりするとき、人は「露悪家」になろうとするのでしょう。


綺麗事か、「露悪家」か。

どちらが正しいということではないでしょう。

どちらも行き過ぎれば、戦争や差別や争いになりますから、うまくバランスを取るしかありません。

 

 

 

名言⑥
人間はね、自分が困らない程度内で、なるべく人に親切がして見たいものだ

「(中略)人間はね、自分が困らない程度内で、なるべく人に親切がして見たいものだ」

三四郎』(夏目漱石/著 岩波文庫)より引用

 

三四郎」の友人、「与次郎」の言葉です。


ある事情により、「三四郎」は「美禰子」からお金を借りることになりました。

借りたものの、落ち着かないので、できるだけ早く返したい。

そんな「三四郎」に対して、「与次郎」は言います。

向こうは喜ぶから、借りたままにしてやれ、と。


人に対して、ちょっと親切をするだけで、何だか気持ちが楽になりませんか?

自分も相手も疲れないような、ちょっとの親切は、心に余裕を作ります。

だから人は、ちょっとくらいの親切を、誰かにしてあげたくなるのかもしれませんね。

 

名言⑦
現代人は事実を好むが、事実に伴う情操じょうそう切棄きりすてる習慣である。

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(中略)現代人は事実を好むが、事実に伴う情操は切棄る習慣である。切棄なければならないほど世間が切迫しているのだから仕方がない。(中略)

三四郎』(夏目漱石/著 岩波文庫)より引用

 

「広田先生」は新聞を例に挙げながら、世の中をそう批評します。

「広田先生」は次のように言います。


新聞の記事は悲劇が多い。

死亡した人数、戸籍、年齢。事実がわかりやすく整理されている分、便利である。

しかし、人はそれらの悲劇をただ事実として知るだけで、いちいち想像して感じたりはしない。

だから人に起こった出来事が、当人にとっては悲劇でも、他人はそれほど同情してはくれないのである、と。


便利さを追求すると、あらゆることが情報化されていきます。

情報化とは、何でも数字や文字で表すこと。

情報そのものは意味を持ちません。

数字や文字の向こうに、生身の人間を想像すること。それが「読む」という行為です。

 

名言⑧
ただ口の内で迷羊ストレイ シープ迷羊ストレイ シープと繰返した。

三四郎は何ともこたえなかった。ただ口の内で迷羊、迷羊と繰返した。

三四郎』(夏目漱石/著 岩波文庫)より引用

 

小説『三四郎』の最後の言葉です。

三四郎」が恋心を寄せていた相手「美禰子」は、ほかの男性と結婚することになりました。

三四郎」は、

「ストレイ・シープ」

と謎の言葉を繰り返すばかり。


彼の心のなかは、誰にもわかりません。


これまで読者とほぼ一体になり、思いや考えを共有していた「三四郎」。

でも、最後には、小説世界のひとりの登場人物として、読者に謎をかけるのです。


三四郎』は女性に始まり、女性に終わる小説です。

異性の問題。

結婚の問題。

人生における難問を前にして迷う、個人の姿があります。


個人として問題に向き合うのですから、正解はありません。

私たちは「ストレイ・シープ」。

生きることは迷い続けること。

 

 

 

まとめ

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夏目漱石の『三四郎』は、明治時代の社会のようすが生き生きと感じられる小説です。

それと同時に、現代にも通じる問題が描かれ、共感できる名言がいくつも散らばっています。


ページをめくるうちに引き込まれ、自分が主人公になったつもりで読んでしまう。

それが『三四郎』の大きな魅力です。


あなたもぜひ『三四郎』を手に取って、自分だけの名言集を編んでみてくださいね。

 

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