クリスマスがもっと特別になる名作小説『クリスマス・キャロル』の魅力
※『クリスマス・キャロル』(ディケンズ/作 脇 明子/訳 岩波少年文庫)の内容紹介
こんにちは、『文人』です。
毎年クリスマスの時期になると、周りの雰囲気が変わってきて、つい意識してしまいますよね。
「クリスマス、どう過ごそうか……」
と、考えたとき、家でまったり読書をする人も少なくないはず。
クリスマスが好きな人にも、苦手な人にも、ぜひおすすめしたいのが、
『クリスマス・キャロル』
19世紀イギリスを代表する作家チャールズ・ディケンズの名作小説です。
まだクリスマスを祝う習慣があまりなかった時代、
クリスマスの魅力を生き生きと伝え、世に広めたという本作。
そんな『クリスマス・キャロル』の内容と魅力をわかりやすく紹介していきます。
『クリスマス・キャロル』とは?
クリスマス前夜、けちで気むずかしいスクルージの前に現れた3人の幽霊たちは、過去・現在・未来を見せてくれたのですが……。
19世紀イギリスのクリスマスをいきいきと伝える物語。
『クリスマス・キャロル』(ディケンズ/作 脇 明子/訳 岩波少年文庫)裏表紙の紹介文より
- 作者は、チャールズ・ディケンズ(1812~1870)
19世紀イギリスを代表する作家。
代表作は、『オリバー・ツイスト』、『クリスマス・キャロル』、『二都物語』など。 - 『クリスマス・キャロル』では、クリスマスを楽しむ人々の温かい情景が魅力的です。
クリスマスツリーや、サンタクロースや、プレゼントといった現在のクリスマスとは異なり、家族や知人が集まって飲み食いしたり、ダンスを踊ったり、かんたんな遊びをしたりしながら愉快に過ごします。
素朴だけれど生き生きとしたクリスマスが描かれています。
魅力①
クリスマス嫌いの老人「スクルージ」
子供向けの物語というイメージのある『クリスマス・キャロル』。
しかし主人公は、意外にも老人です。
人生を長く生き、さまざまな経験をしてきた老人が、クリスマスに不思議な体験をし、自分の生き方を反省する。
大人が読んでもおもしろい、深みのある物語となっています。
○主人公「スクルージ」の性格
主人公「スクルージ」は、ロンドンで金融関係の事務所を営んでいる老人。
けちで、強欲で、気難しいおじいさん。
金持ちなのですが、貧しい人のための寄付を頼まれても、びた一文渡そうとしません。
誰に対しても冷たく無慈悲なので、周りから嫌われています。
○クリスマス? 「くだらん!」
「スクルージ」はクリスマスが嫌いです。
なぜかというと、損が多いから。
クリスマスの時期になると、出費ばかり。
おまけにうるさく寄付を呼びかけられるし、事務所の書記に有給休暇を取らせないといけない。
甥から、
「クリスマスおめでとう、おじさん!」
と声をかけられても、「スクルージ」は、
「くだらん!」
と冷たく返し、クリスマスをののしります。
○「スクルージ」を改心させる幽霊たち
クリスマス・イブの夜、「スクルージ」は不思議な体験をします。
さまざまな幽霊が現れ、「スクルージ」に、過去・現在・未来を見せてきたのです。
ひとりぼっちでクリスマスを過ごした少年時代。
生きることの苦労を経験し、お金の勘定ばかりするようになり、「あなたは変わってしまった」と、美しい恋人に去られてしまった壮年時代。
そして現在。
事務所の書記「ボブ」が、貧しい暮らしをしながらも、家族と温かく幸せなクリスマスを過ごす光景。
それから未来。
死んだあと、人々に見放され、身のまわりの金品をはぎ取られ、荒れた墓地に打ち捨てられるように埋葬された光景。
そんな過去・現在・未来の光景を見せられた「スクルージ」は、嘆き悲しみます。
自分はどれだけ寂しく貧しい人生を過ごしてきたことか。
「スクルージ」は生き方を反省し、これからはクリスマスを大切に祝おうと決心し、実際そのように行動するのです。
魅力②
生き生きとしたクリスマスの情景
『クリスマス・キャロル』の魅力を語るうえで欠かせないのが、
クリスマスを温かく祝う人々の情景です。
当時のクリスマスは、今と異なり、ツリーもサンタクロースもプレゼントもありません。
人々は温かな笑顔で、
「クリスマスおめでとう」
と声をかけ合い、みんなで飲み食いしたり、踊ったり、遊んだりして幸せな夜を過ごします。
○「スクルージ」の事務所の書記、「ボブ」のクリスマス
「スクルージ」の経営する事務所で働いているのが、「ボブ」という男。
「ボブ」は優しく温かい性格で、家族と過ごすクリスマスを毎年楽しみにしています。
「ボブ」の収入は少なく、一家の暮らしは貧しい……。
奥さんの「クラチット夫人」、
長男の「ピーター」、
長女の「マーサ」、
次女の「ベリンダ」、
わんぱくな男の子と女の子、
そして小さな「ティム坊や」、
計8人のにぎやかな家族です。
「ボブ」一家は、手分けして食事の支度を整え、みんなで温かく食卓を囲みます。
クラチット夫人は、肉汁を(小さな片手鍋に、前もって作ってありました)しゅんしゅんと煮立たせました。ピーター君は、信じがたいほどの勢いでジャガイモをつぶしました。ベリンダ嬢は、リンゴで作ったソースに甘味をつけました。マーサは、温めたお皿をふきました。ボブは、テーブルのすみっこの自分のとなりの席に、ティム坊やをすわらせました。幼い二人組は、自分たちのも忘れずに全員のいすをきちんと並べ、持ち場について見張りをはじめました。(中略)
やっとのことでお皿が並び、食前の祈りが唱えられました。続いてクラチット夫人が庖丁を手に取り、使う前にまず上から下まで刃の具合をたしかめましたが、みんなは息を止めてその様子を見守りました。夫人がガチョウの胸にそれを刺し、待ちに待った詰めものがどっとあふれ出ると、みんなはいっせいに喜びのため息をもらしました。ちっちゃいティム坊やまでが、二人組につられて、ナイフの柄でテーブルをたたき、かよわい声で「わーい!」と叫びました。
メインの料理、ガチョウを切り分ける場面が、臨場感あふれる文章で生き生きと描かれています。
現在のクリスマスのような派手な装飾は出てきませんが、人々が集まって、素朴で貧しいながらも、温かく幸せな時間を過ごしている様子が伝わってきます。
魅力③
『クリスマス・キャロル』のメッセージ
物語のなかで印象的に描かれているのは、
「人間のさまざまな貧しさ」
主人公「スクルージ」は今まで目をそむけてきた、さまざまな「貧しさ」に直面します。
そうしてクリスマスを祝う本当の意味を知ります。
「クリスマスおめでとう(メリークリスマス)」
という言葉は、
「あなたに祝福がありますように」
というメッセージ。
クリスマスとは、「貧しさ」で冷たく心を閉ざした人々が、心を開いて、温かく声をかけ合い、人間としての幸せを分かち合う日だったのです。
おわりに
『クリスマス・キャロル』は、何度でも読み返して味わうことができる、世界文学の名作です。
子供向けの物語としても楽しめますが、実は、大人に向けた深いメッセージも込められています。
クリスマスを祝う気持ちは、年齢とともに冷めていってしまいがち。
主人公の老人「スクルージ」が、人生の貧しさを悟り、クリスマスを祝う気持ちを取り戻そうとする姿に心を打たれます。
興味を持ったら、ぜひ本を手に取ってみてください。
クリスマスがもっと特別に感じられるようになりますよ。
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