※『クリスマス・キャロル』(ディケンズ/作 脇 明子/訳 岩波少年文庫)の名言紹介
こんにちは、『文人』です。
ひとりのクリスマスにおすすめなのが読書。
ケーキやホットワインをお供にゆったりと読書をすれば、体も心も温かくなります。
クリスマスをテーマにした本の中でも定番なのが、
『クリスマス・キャロル』
19世紀イギリスを代表する作家チャールズ・ディケンズの小説です。
クリスマスを生き生きと描いた世界的名作として読み継がれています。
子供向けの童話としても面白く、大人向けの小説としても奥深い。
今回はそんな『クリスマス・キャロル』の中の名言をわかりやすく紹介していきます。
名言①
なにしろ、スクルージときたら、握ったが最後、死んでも離さない男でした。
なにしろ、スクルージときたら、握ったが最後、死んでも離さない男でした。ひっつかみ、もぎ取り、絞りあげ、こそげ取る、欲の皮のつっぱった罪深い男ーーそれがスクルージだったのです!
『クリスマス・キャロル』(ディケンズ/作 脇 明子/訳 岩波少年文庫)P9.10より引用
主人公「スクルージ」は、ロンドンで金融関係の事務所を営む老人です。
彼の特徴を一言で表すと、
「握ったが最後、死んでも離さない男」
金持ちだけれど、けちで、強欲。
貧しい人々のための寄付を頼まれても、びた一文渡しません。
冷たく無慈悲であるため、周りから嫌われています。
『クリスマス・キャロル』は、そんな「スクルージ」が、クリスマス・イブに不思議な体験をするお話です。
『クリスマス・キャロル』のおもしろいところは、主人公が老人であること。
童話のように親しみやすい物語ですが、何度も読み返して味わえるくらい、奥が深いんです。
名言②
『クリスマスおめでとう』などとほざいてまわる馬鹿者どもは、プディングといっしょに袋に詰めてゆでてやるわい。それから、杭がわりにヒイラギの枝を心臓に打ちこんで、埋めてやるんじゃ。
「『クリスマスおめでとう』などとほざいてまわる馬鹿者どもは、プディングといっしょに袋に詰めてゆでてやるわい。それから、杭がわりにヒイラギの枝を心臓に打ちこんで、埋めてやるんじゃ。そうじゃとも!」
『クリスマス・キャロル』(ディケンズ/作 脇 明子/訳 岩波少年文庫)P15より引用
クリスマスの前日。
「スクルージ」の事務所に、甥の青年「フレッド」が顔を見せます。
「クリスマスおめでとう、おじさん!」
と、祝福の言葉をかける「フレッド」。
温かい甥に対して、「スクルージ」おじさんは、
「ふん!」
と冷たく返します、
「くだらん!」
「スクルージ」は、クリスマスが嫌いだったのです。
なぜなら、クリスマスは出費が多い。めでたいどころか、損ばかり。
それなのに、
「クリスマスおめでとう」
と、めでたがる連中の頭はどうかしている。
そんな「馬鹿者ども」は、
「プディングといっしょに袋に詰めてゆでてやるわい。それから、杭がわりにヒイラギの枝を心臓に打ちこんで、埋めてやるんじゃ」
「プディング」は、イギリスの伝統的なクリスマスケーキのこと。
「ヒイラギの枝」は、クリスマスの飾りによく使われます。
「スクルージ」がどれだけクリスマスを嫌っているか、よくわかりますね。
名言③
とにかくクリスマスは、親切と、許しと、恵みと、喜びのときなんです。
「(中略)とにかくクリスマスは、親切と、許しと、恵みと、喜びのときなんです。長い一年のなかでもこのときだけは、男も女もみんないっしょになって、ふだんは閉ざされた心を大きく開き、自分たちより貧しい暮らしをしている人たちも、墓というおなじ目的地にむかって旅をする仲間同士なのであって、どこかべつの場所へむかうべつの生きものじゃないんだってことを思い出すんです。(中略)」
『クリスマス・キャロル』(ディケンズ/作 脇 明子/訳 岩波少年文庫)P16より引用
甥の「フレッド」は、クリスマスが大好き。
クリスマスは1年のなかで、最も人間らしい温かさを分かち合える日。
男性も女性も、裕福な人も貧しい人も、性別や立場を超えて祝福し合う日。
だから「フレッド」は、世間から嫌われているかわいそうな「スクルージ」のところにも必ず出向いて、
「クリスマスおめでとう」
と温かい言葉をかけるのです。
クリスマスは本来、キリスト教のお祭り。
しかし宗教行事から離れ、世界的なお祭りになったのは、すべての人間を祝福する温かさがあるからでしょう。
名言④
わしが今夜ここへ来たのは、おまえに警告を与え、わしとおなじ運命から逃れる希望と機会とを与えるためだ。
「決してたやすいことではないが、これもわしの罪をつぐなうための苦行の一部なのだ」と、幽霊は続けました。「わしが今夜ここへ来たのは、おまえに警告を与え、わしとおなじ運命から逃れる希望と機会とを与えるためだ。希望と機会だけなら、なんとか手に入れてやることができたのでな、エビニーザ。」
『クリスマス・キャロル』(ディケンズ/作 脇 明子/訳 岩波少年文庫)P49より引用
「スクルージ」が仕事を終えて家に帰ると、さまざまな怪奇現象が起こります。
そして部屋に現れたのは、幽霊!
その正体は、事務所の共同経営者であり、「スクルージ」のたったひとりの友人「マーレイ」でした。
7年前に死去した「マーレイ」が、幽霊になって現れたのです。
「マーレイ」は語ります。
自分は間違った生き方をしてきたこと、
今となっては後悔してもしきれないこと、
死んでから辛い目に遭っていること。
金勘定よりも、すべての人間のため、特に貧しい人々のために働くべきだったのだ……
幽霊になった「マーレイ」が、「スクルージ」の前に現れた理由。
それは、「おなじ運命から逃れる希望と機会とを与えるため」。
このままでは死後、「スクルージ」は自分と同じ過酷な目に遭う。
だから友のため、そして自身の罪のつぐないのため、「スクルージ」が生き方を変えられるようチャンスを与えに来たというのです。
名言⑤
あなたの持っていたさまざまな望みは、お金ばかりを気にする世間にばかにされたくないというただ一つの望みに、全部のみこまれてしまったのよ。
「あなたは世間を恐れすぎているのよ」と、娘は優しく答えました。「あなたの持っていたさまざまな望みは、お金ばかりを気にする世間にばかにされたくないというただ一つの望みに、全部のみこまれてしまったのよ。あたしは、あなたの持っていたりっぱな志が一つ、また一つと捨てられて、欲という大きな情熱だけがあなたを支配するようになっていくのを見てきたわ。ちがうかしら?」
『クリスマス・キャロル』(ディケンズ/作 脇 明子/訳 岩波少年文庫)P86より引用
「マーレイ」の幽霊が去ったあと、「スクルージ」のもとに別の幽霊が訪ねてきました。
「過去のクリスマスの幽霊」だといいます。
その幽霊に導かれ、「スクルージ」は自身の過去と向き合います。
「スクルージ」の魂は、過去へ飛んでいきました……
そこには若い自分の姿がありました。
働き盛りの頃で、すでに純粋さは失われ、生きることの苦労や、欲望に染まっている。
そしてもうひとり、若い美しい娘がいて、涙を浮かべています。
ふたりの会話を、「スクルージ」は辛く見守ります。
それは過去の自分が、恋人から別れを言い渡されている場面でした。
恋人は言います。
あなたは変わってしまった、と。
「りっぱな志が一つ、また一つと捨てられて、欲という大きな情熱だけがあなたを支配するようになっていくのを見てきたわ」
あなたはもうわたしを求めていない。
あなたの頭にあるのはお金の勘定だけ。
……そうして結婚の約束が破棄された場面でした。
「スクルージ」にとって、見たくない過去。
目をそむけ、考えないようにしてきた過去でした。
それを幽霊にまざまざと見せられ、苦しみます。
名言⑥
「あの因業おやじめ、死んでからも物を握っていたいんだったら」と、女は話を続けました。「命があるうちに、もっとふつうにやってりゃよかったのさ。そうしてれば、急に死神にやられたって、だれかがそばにいたはずで、息の根が止まるときも一人っきりなんてことはなかったろうにさ。」
「あの因業おやじめ、死んでからも物を握っていたいんだったら」と、女は話を続けました。「命があるうちに、もっとふつうにやってりゃよかったのさ。そうしてれば、急に死神にやられたって、だれかがそばにいたはずで、息の根が止まるときも一人っきりなんてことはなかったろうにさ。」
『クリスマス・キャロル』(ディケンズ/作 脇 明子/訳 岩波少年文庫)P166より引用
「過去のクリスマスの幽霊」によって、自身の歩んできた寂しい人生を見せつけられ。
次に「現在のクリスマスの幽霊」によって、事務所に勤める書記「ボブ」の貧しくも幸せなクリスマスの場面を見せられ、人間の温かさを知り。
……最後に現れたのは「未来のクリスマスの幽霊」でした。
今度は何を見せられるのか?
幽霊に導かれた先には、うわさ話をするさまざまな人々がいました。
うわさになっている当人は、どうやら死んだらしい。
人々は死んだその人を冷たくさげすみ、笑い、ののしっています。
死んだその人は、死んだのをいいことに身のまわりの金品も、服もはぎとられ、みすぼらしい死骸になって埋葬されました。
その墓は打ち捨てられたように雑草が生い茂り、花ひとつ供えられていません。
墓には「スクルージ」の名前が……。
そう、死んだのは未来の自分だったのです。
名言⑦
わたしは心からクリスマスを大切にし、その気持ちを一年じゅう持ちつづけるようにいたします。過去と現在と未来とを、ちゃんと見つめて生きていきます。
「わたしは心からクリスマスを大切にし、その気持ちを一年じゅう持ちつづけるようにいたします。過去と現在と未来とを、ちゃんと見つめて生きていきます。(中略)」
『クリスマス・キャロル』(ディケンズ/作 脇 明子/訳 岩波少年文庫)P190より引用
「クリスマスの幽霊」によって、自身の過去・現在・未来を突きつけられた「スクルージ」。
自身の貧しく寂しい生涯を知った「スクルージ」は、今まで見ようとしなかったものを誠実に見つめて生きていく決心をします。
労働者たちの貧乏な暮らしぶり。
げっそりとやせ細り、汚れて、死んだ目をして人気のない道をうろつく子供。
金持ちでありながら、人々から見放され、粗末に埋葬される老人。
『クリスマス・キャロル』にはいろいろな貧しさが印象的に描かれています。
貧しさはどこにでもあり、誰もがいずれ直面するもの。
「スクルージ」の改心は、自身の貧しい生き方を清算するという点で、切実な意味をふくんでいます。
名言⑧
「クリスマスおめでとう、ボブ!」
「クリスマスおめでとう、ボブ!」スクルージはボブの背中をたたきながら、今度はまちがえようのない、心のこもった言葉をかけました。「これまで長いあいだ、ろくなクリスマスを祝わせてあげられなかったが、今度こそは、ほんとに楽しいクリスマスにしよう!(中略)」
『クリスマス・キャロル』(ディケンズ/作 脇 明子/訳 岩波少年文庫)P206.207より引用
幽霊から解放された「スクルージ」。
気がつくと、クリスマス当日です。
さっそく「スクルージ」は、貧しい人々のために多額の寄付をし、
甥の「フレッド」の主催するクリスマスパーティーに参加し、
事務所の書記「ボブ」のために大きな七面鳥をプレゼントします。
そして今まで大嫌いだった言葉を、心から口にするのです。
「クリスマスおめでとう」
「スクルージ」の劇的な変化。
都合がよすぎる?
いいえ、物語のなかで描かれている人間的な温かさは、本来、誰もが持っているはずのものです。
「スクルージ」は人生の最後で、その人間的な温かさを取り戻すために行動するのです。
まとめ
『クリスマス・キャロル』の主人公「スクルージ」は、世間から嫌われている老人ですが、とても人間味があって共感できますよね。
一生懸命に生きるうちに、いつのまにか、愛情よりも金を大事にするようになってしまうところ。
世間を恐れるあまり、自分を守るため、心を冷たく閉ざしてしまうところ。
そんな「スクルージ」が人生の最後で、心を開き、人間的な温かさを取り戻そうとする姿に感動します。
興味を持ったら、ぜひ本を手に取ってみてください。
きっとクリスマスが今よりもっと特別な日になりますよ。
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