作家やライターになるために読んでおきたい本――『自家製 文章読本』(井上ひさし)
※『自家製 文章読本』(井上ひさし/著 新潮文庫)の紹介記事
こんにちは、『文人』です。
今は趣味でブログや小説を書いている人が多いですよね。
書くことに魅力を感じているうちに、
「いつかプロになって自分の本を出したい!」
と願っている人もいるのではないでしょうか?
でも、文章がうまく書けない。
悩めば悩むほど書けなくなり、どうしたらいいのかわからなくなっている。
そんな人にぜひ読んでほしいのが、
『自家製 文章読本』(井上ひさし/著 新潮文庫)
作家・井上ひさしが文章の書き方について説いた本です。
今回は、『自家製 文章読本』をおすすめする理由と、魅力についてわかりやすく紹介していきます。
『自家製 文章読本』とは?
喋り慣れた日本語も、書くとなると話が違う。文章を上手に書くことができたら……。だが、「話すように書け」と人は説くけれど、「話すように書け」ばいい文章が書けるのか。簡潔ならばいい文章なのか。いや、そんな単純なものじゃない。文章術の極意は奈辺にありや。文学史にのこる名作から現代の広告文までを縦横無尽に駆使して、従来の文章読本の常識を覆す井上ひさし式文章作法。
『自家製 文章読本』(井上ひさし/著 新潮文庫)裏表紙の紹介文より
- 著者は作家・井上ひさし(1934~2010)。
NHKの人形劇「ひょっこりひょうたん島」、小説『手鎖心中』(直木賞)や『吉里吉里人』(読売文学賞、日本SF大賞)、多数のエッセイなどで有名。 - 著者・井上ひさしは猛烈な読書家、勉強家で知られています。
言葉や文章に関する著作が多く、井上ひさし自身、抜群に文章が上手い作家です。 - 古今東西のさまざまな文章を紹介しながら、文章作法を丁寧に説いています。
他の文章作法本の問題点をつぶさに指摘するなど、かゆいところに手が届く内容が魅力。
おすすめの理由①
「書けない……」という切実な悩みに応えてくれる
良い文章を書きたいのに、いざ書こうとすると、
「書けない……」
という悩み。
文章を書いている人なら誰もがぶつかる問題ですよね。
たくさんの小説やエッセイを執筆し、第一線で活躍してきた著者・井上ひさしも、実はかなりの遅筆で書くことに苦心していたようです。
「文章の燃料」という章では、
それにしてもわれわれはなぜ文章を書くのがこれほど苦手なのだろうか。だれもが「いい文章が書けたらよいのに」とねがっているのに、どうして机の前に坐るとああ手もなく金縛りになってしまうのか。
『自家製 文章読本』(井上ひさし/著 新潮文庫)「文章の燃料」より引用
という嘆きが出てきます。
「本当にそうなんだよ!」
と思わず共感してしまう言葉です。
本書の魅力のひとつは、親しみやすい語り口。
文章作法について古今東西の本をひもときながら説明されるので、内容はどうしても複雑でむずかしくなります。
しかし、
「書けない……」
という読者の切実な悩みに応えながら、親しみやすい語り口で進んでいくので、読みやすく、頭に入りやすい内容となっています。
「文章作法の本なんて、理屈っぽくて、どうせ役に立たないだろう」
と敬遠していませんか?
実は私もそのひとりです。
しかし本書は、文章を書いている人が、「さらに個性的で魅力のある文章を書く」ための本です。
書く人間から見て、とても内容豊かで、参考になります。
おすすめの理由②
文章の理解がぐっと深まる
谷崎潤一郎の『文章読本』を元祖として、さまざまな作家が独自の『文章読本』という名前の本を出してきました。
ほかにも文章作法について説いた本がおびただしく出版されており、どれだけ読んでも切りがないくらいです。
ありがたいことに、著者・井上ひさしはそれら文章関連の書籍を読み漁り、本書の中で紹介してくれています。
さまざまな『文章読本』から、問題点を指摘しながらユニークな説を展開したり。
文章について説かれた古今東西の本を引用したり。
まさに、
「著者と二人三脚でたくさんの文章指南書を読み解きながら、文章の書き方について考えていく」
という感覚で読める構成となっています。
本書を読み終えた後には、あらゆる文章関連の本を読み漁ったような満足感が得られますよ。
おすすめの理由③
作家やライター向けの文章技術が学べる
本書には、「文間の問題」や「オノマトペ」といった章があります。
私が本書をおすすめする一番の理由がこれです。
「文間?」
「オノマトペ?」
わからない人のためにちょっと説明しますね。
「文間文法」とは、文と文の接続の仕方や、行間の呼吸のようなもの。
読者が思い思いに想像したり解釈したりする余地を作ったり。
逆に、読者を引きずり込んでどんどん読ませたり。
文間を工夫することで、個性的で魅力のある文章を書くことができます。
一方、「オノマトペ」とは、擬音語や擬態語のこと。
「女の子がとことこ歩いている」
なんて書いたら「幼稚な文章だ」と思うでしょうか?
実はオノマトペは名作文学の中でも効果的に使われているくらい、れっきとした技法です。
オノマトペも使いこなしてこそ、魅力的な文章が書けるようになります。
「文間文法」と「オノマトペ」。
どちらも文章を書くうえでは大変デリケートな技法です。
一般的な文章作法の本では扱いにくいような技法も、本書ではわかりやすく丁寧に解説されています。
作家やライターを志す人ならぜひ学んでおきたい文章技法です。
まとめ
『自家製 文章読本』(井上ひさし/著 新潮文庫)は、個性的で魅力のある文章を書きたい人、特に作家やライターになるために勉強したい人におすすめの本です。
読書家で勉強家、そして文章が上手い作家・井上ひさしの本だけに、おもしろくて読みやすいです。
今まで文章作法の本を敬遠していた人こそ、ぜひ本書を手に取ってみてください。
文章を書いている人ならきっと参考になるはずですよ。
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