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文章本の元祖!一度は読みたい谷崎潤一郎『文章読本』

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※『文章読本』(谷崎潤一郎/著 中公文庫)の紹介記事

 

こんにちは、『文人』です。


「文章がうまく書けるようになりたい!」

と思って本を探しても、どれを手に取ったらいいか迷いますよね。

文章作法の本はたくさんあり過ぎて、読み出したら切りがありません。

どうせなら、「これ!」という良質な1冊に絞りたい。


そこでおすすめなのが、文章読本』(谷崎潤一郎/著 中公文庫)です。

文豪・谷崎潤一郎が、一般向けに「文章の書き方」を説いた本。

川端康成三島由紀夫などが同タイトルの本を出していますが、本書はその元祖です。


今回はそんな文章読本』(谷崎潤一郎/著 中公文庫)をおすすめする理由とその魅力をわかりやすく紹介していきます。

 

 

 

 

谷崎潤一郎文章読本』とは?

「文章に実用的と藝術げいじゅつ的との区別はないと思います。」(本文より)――正しく文学作品を鑑賞し、一行でも美しい文章を書こうと願うすべての人々の必読書。

 『文章読本』(谷崎潤一郎/著 中公文庫)裏表紙の紹介文より

 

  • 著者は、作家・谷崎潤一郎(1886~1965)

    代表作は『痴人の愛』『春琴抄』『細雪』など。


  • 文章読本』は1934年(昭和9)に刊行。

    当時のベストセラーとなり、多くの作家に影響を与えました。

    川端康成三島由紀夫などの名だたる作家が同タイトルの本を続々と出すことになりました。


  • 本書は「日本人が日本語の文章を書く心得」を説いたもの。

    いまでも読み継がれている名著であり、文章の理解を深めるためにぜひ読んでおきたい本です。

 

 

 

おすすめの理由①
日本語とは何か? 現代文とは何か? 文章の理解が深まる

 

私たちはふだん何気なく日本語を使い、文章を書いていますよね。

そもそも日本語ってどこから生まれたんだろう?

いまの日本語の文章ってどんなふうにして創られたんだろう?

こんな疑問を感じたことはありませんか?

学校でもなかなか教えてもらえない難問ですが、本書ではその根本的なことがわかりやすく説かれています。


著者・谷崎潤一郎は『文章読本』について、「われわれ日本人が日本語の文章を書く心得」を書いた本であると紹介しています。

その言葉通り、本書では、

現在の日本語(現在の文章)がどのように生まれたのか

日本人の特質とは何か

日本語をどのように活かせば良い文章が書けるのか

ざっとこのようなテーマで語られます。


文章を書く前に、まずは自分の使う言葉について理解を深めること。

そうでなくては、どれだけ書き方を学んでも文章はうまくならない。

著者は暗にそう説いているのです。


日本文学の第一線で活動してきた文豪の本だけに、内容豊かで、深みがあります。

文章の書き方を学べるだけでなく、読み物としてもおもしろい。

それが本書の魅力です。

 

おすすめの理由②
日本語で文章を書くことのむずかしさがわかる

 

「時間をかけても、文章がうまくまとまらない!」

「一生懸命書いたのに、伝わらない……」

こういう経験は誰にでもあります。

どうして文章を書くことがこんなにむずかしいのか?


本書の第一章である、

「一 文章とは何か」

を読むと、その理由がよくわかります。


第一章では、「現代文と古典文」、「西洋の文章と日本の文章」、それぞれの違いを明らかにしています。

現代の日本語で文章を書くことのむずかしさと問題点がわかるような構成になっているのです。


現代文の問題点とは何か?

ごくかんたんに言うと、

 

  • 現代の日本語は言葉が増えすぎて扱いがむずかしくなっていること

  • 現代文は西洋の影響を受けて、表現を盛り過ぎる傾向があること

 

そして、日本語の文法では上のような問題点をうまく処理できないのです。


たとえば、私たちは文章を書くとき、見たものや感じたことを正確に表現しようとします。

すると、言葉(主に形容詞や副詞)を盛りすぎて、文が長くなり、複雑な文章になりやすい。

「文章がうまくまとまらない」「一生懸命書いたのに、伝わらない」という問題が起こるのはそのためです。


著者は次のように戒めています。

西洋の文法は)テンスの規則があって、時間的に細かい区別をつけることが出来、前の動作と後の動作とがはっきり見分けられる。また、関係代名詞とう重宝な品詞があって、混雑を起すことなしに、一つのセンテンスに他のセンテンスを幾らでも繋げて行くことが出来る。(中略)そう云う構造なればこそ、多くの語彙を積み重ねても意味が通じるのでありますが、全然構造を異にする国語の文章に彼等のおしゃべりな云い方を取り入れることは、酒を盛る器に飯を盛るようなものであります。しかるに現代の人々は深くこの事実に留意しないで、とかく言葉を濫費らんぴする癖があります。

 『文章読本』(谷崎潤一郎/著 中公文庫)「一 文章とは何か」より引用

 

日本語の文法では、言葉を足せば足すほど文章が複雑になり、間違いをおかしやすくなります。

大事なのは、表現を盛ることではなく、言葉を削ること。

著者はそれを具体的な例を挙げながら説得力ある言葉で説明しています。

 

おすすめの理由③
本当に良い文章とは何か? 名文の読み方がわかる

 

著者が諭しているのは、日本語の性質をよく理解し、活かすこと。

そのためには、古典の名文をよく読み、文章の感覚を磨くことが大事だと言います。


本書では古典の名文が多く引用されています。

本書の魅力は、さまざまな古典の名文の読み方、味わい方がわかりやすく丁寧に解説されていることです。

文章はうまくなりたいけれど、古典なんて読めない!

という人にも理解しやすいです。

文章について学びながら、古典の魅力にも触れることができます。


良い文章を書くためには、当然ですが、良い文章とは何かを知っていなければだめでしょう。

古典の名文に触れて、文章の感覚を磨くこと。

本書はそのための手引きなのです。

 

 

 

まとめ

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谷崎潤一郎の『文章読本』は、かなり昔に書かれた本ですが、いま読んでも納得できるほど深い内容となっています。

本書で説かれている「言葉を削る」「表現に含みを持たせる」「主格を省く」などのテクニックは実際に書くとき参考になります。


ほんとうは一度と言わず、何度も読んでほしい名著です。

おすすめは、本棚に入れておいて、何度も読み直すこと。

読み直すたびに新しい気づきがあり、自分の成長を感じられますよ。


気になった人はぜひ手に取ってみてください!

 

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