当ブログにはプロモーションが含まれています

良い文章とは? 書き方に迷った時に読むべき本――鶴見俊輔『文章心得帖』

f:id:humibito:20201028170949j:plain

※『文章心得帖』(鶴見俊輔/著 ちくま学芸文庫)の紹介記事。

 

こんにちは、『文人』です。


うまく書いてやるぞ!

と意気込んで文章を書き始めたものの、どうしたらうまく書けるのかわからない。

とりあえずプロの文章の真似をしながら書いてみたけれど、果たして本当にこれでいいのか……。

そんなふうに文章で迷った経験があるのではないでしょうか?

私もその1人です。


そもそも良い文章って何だろう?

まず良い文章とは何かを理解していないと、書いているうちに自分を見失いやすいのです。


文章の書き方に迷った時にぜひ読んでほしいのが、

『文章心得帖』(鶴見俊輔/著 ちくま学芸文庫

本書をおすすめする理由とその魅力をわかりやすく紹介していきます。

 

 

 

 

『文章心得帖』とは?

以下のリンクは筑摩書房 『文章心得帖』(鶴見俊輔/著 ちくま学芸文庫)の公式ページです↓
www.chikumashobo.co.jp

 

  • 著者は鶴見俊輔(1922~2015)

    戦後を代表する思想家。多くの評論やエッセイを遺しています。 


  • 1980年に発表された本ですが、内容はまったく古びていません。

    今でも読まれている文章作法の名著です。


  • 本書は文章教室の講義をまとめたもの。

    生徒の作文を添削しながら、良い文章とは何かを説きます。

    やさしい言葉で書かれているので、書き方のコツが頭に入りやすい。なおかつ奥深い。文章作法の本が苦手な人にも読みやすいです。

 

 

 

おすすめの理由①
文章で失敗する原因がわかりやすく説かれている

 

本書の魅力のひとつは、著者の言葉づかいがやさしいこと。

著者は長年文章と付き合い、書くことに苦しんできたといいます。

その経験から学んだことを、わかりやすく噛み砕いた言葉で説いています。


はじめに著者はこう述べます。

文章を書く上で大事なことは、まず、余計なことをいわない、ということ。次に、紋切型の言葉をつきくずすことだと思う。

『文章心得帖』(鶴見俊輔/著 ちくま学芸文庫)「一 文章を書くための第一歩」より引用

 

 易しさの中にも含蓄のある言葉ですよね。

余計なことをいわない

紋切型の言葉をつきくずす

文章を書くときの注意点はまさにそこにあります。

余計なことを書いて、話がこんがらがる。

紋切り型の言葉をうかつに使ったことで、表現が浅くなる。

結果、伝えたいことが今一つ伝わらない。

私たちが文章を書くとき、ついやってしまいがちな失敗のパターンです。


著者は文章教室の生徒たちの作文を紹介し、それを添削しながら、さまざまな失敗の原因に目を向けていきます。

生徒たちは一般の大人です。

一見うまく書けた作文のように見えますが、言葉の乱れ、余計な付け加え、凝りすぎた表現、うかつな紋切り型など、ありがちな失敗がひそんでいます。


一般の作文なので、読んでいる私たちも、

うんうん、わかる。こんなふうに書いてしまいがちだよな……

と共感しながら読めます。

 

おすすめのポイント②
良い文章を書くための「言葉の選び方」がわかる

 

著者は良い文章の条件の1つとして、「明晰さ」を挙げています。

 明晰さというのは、はっきりしているということ。そこで使われている言葉を、それはどういう意味か、と問われたら、すぐに説明できるということです。言葉によって説明できなければ身振りで説明できる。つまり、「歩く」というのはどういうことかといえば、歩いてみせることができる。それが説明になり定義になっている。行動とか経験による定義になる。もう少し複雑な言葉だったら、言葉で定義していく。自分で定義できない言葉を使うのはぐあいが悪い。

 『文章心得帖』(鶴見俊輔/著 ちくま学芸文庫)「一 文章を書くための第一歩」より引用

 

文章を書くときは、言葉を選ぶ前に立ち止まって考えることが大切です。

 

  • 使おうとしている言葉の意味を理解できているか。

  • 子供にもわかるように説明できるか。

  • その言葉で、本当に自分の気持ちや思いが伝えられるか。

 

もし自分なりに噛み砕いて説明できないような言葉を使ってしまったら、それは紋切り型かもしれません。


紋切り型は、私たちのふだんの会話、テレビや新聞などのメディアでよく耳にする表現です。

いつの間にか頭に染みついているので、書くときにすらすらと出てきてしまいがち。

紋切り型は他人の言い回しを借りているだけなので、自分の思いが伝わらない場合が多いのです。


たとえば、

感慨深い

これは紋切り型です。

文章の中で「感慨深い」を使っても、書き手が何を思ったのか、なかなか相手には伝わらない表現ですよね。


紋切型を疑え」というのが、本書のテーマのひとつです。

紋切り型の表現を疑い、言葉をよく選び、自分自身と向き合うこと。

そういう訓練を繰り返すことで、文章は磨かれる。

思考も磨かれていく。

そのことを本書は教えてくれます。

 

おすすめのポイント③
何度も読み返せるほど奥深い

 

本書の一番の魅力は、ただ文章作法を説いただけの本ではないこと。

著者は私たちに向かって、

「文章とはこう書くものだ」

と上から講釈しているわけではありません。

著者は文章と付き合っているひとりの人間として、

「お互いに気を付けましょう」

と親身に寄り添ってくれています。


文章作法の本というと、つい硬くなってしまいがちですが、本書にはそういう厳しさがないのです。

 本文でも言っていることだが、私は、名文家ではない。ただ、良い文章を書くようになりたいという理想を、この文章教室に来た人たちと共有している。そういうひとりとして、自分の問題とのとりくみかたを、ここで述べた。

 『文章心得帖』(鶴見俊輔/著 ちくま学芸文庫)「まえがき」より引用

 

本書の内容は、著者がこれまでの人生で培ってきた、良い文章を書くための心構えのようなもの。

「絶対にこうだ!」

という押しつけの理論ではありません。

だからこそ言葉づかいにやさしさと含蓄があり、私たち読者の心にすっと入ってきます。


著者の言葉を素直に受け止めて、今度は私たち自身が良い文章について考える。

書き方に迷った私たちが一歩を踏み出せるように、さりげなく背中を押してくれている。

そんな温かさのある本です。

 

 

 

まとめ

f:id:humibito:20201028171058j:plain

 

『文章心得帖』(鶴見俊輔/著 ちくま学芸文庫は、良い文章を書くためのヒントが散りばめられた名著です。

特に第一章である、

一 文章を書くための第一歩

を熟読すると、書き方に迷った時の助けになるでしょう。

巻末に収められた加藤典洋の解説も味のある良い文章なので、ぜひ読んでみてください。

 

🔎おすすめの記事

honwohirakuseikatu.hatenablog.com