本物の文章力を身につけるための1冊――丸谷才一『文章読本』
こんにちは、『文人』です。
文章の書き方を説いた本って、たくさんありすぎて何を手に取ったらいいか迷いますよね。
「本当に参考になる本が見つからない!」
という人も多いのではないでしょうか?
私もこれまでに様々な文章作法の本を読んできました。
その中で一番参考になったのが、
『文章読本』(丸谷才一/著 中公文庫)
作家・丸谷才一が実践的な文章の書き方について説いた名著。
本物の文章力を身につけたい人にぜひ読んでほしい、おすすめの本です。
この記事では、丸谷才一『文章読本』をおすすめする理由やその魅力について紹介していきます。
- 『文章読本』(丸谷才一/著 中公文庫)とは?
- おすすめの理由①文章の理解が深まり、上達の仕方がわかる
- おすすめの理由②名文からどう学べばいいのか教えてくれる
- おすすめの理由③なぜ名文から学ぶべきなのかわかる
- まとめ
『文章読本』(丸谷才一/著 中公文庫)とは?
当代の最適任者が多彩な名文を実例に引きながら文章の本質を明かし、作文のコツを具体的に説く。最も正統的で実際的な文章読本。
『文章読本』(丸谷才一/著 中公文庫)裏表紙の紹介文より
- 著者は作家・丸谷才一(1925~2012)
小説、評論、エッセイ、翻訳、幅広く活動。
主な代表作は『年の残り』(芥川賞)、『たった一人の反乱』(谷崎潤一郎賞)、『後鳥羽院』(読売文学賞)。
2011年、文化勲章受章。 - 豊富な名文の引用と、生き生きとした語り口が魅力的です。
著者の語り口がうまいので、複雑な内容もすっと入ってきます。 - 古典の名文からの引用が多く、読書に慣れていない人は戸惑うかもしれません。
でも、さすがは名文。恐れずに読んでみると、意外と簡潔で、言いたいことが伝わってくる。
「名文って聞くだけで何だか難しそう……」
という人にこそ読んでほしい本です。
おすすめの理由①
文章の理解が深まり、上達の仕方がわかる
文章を書くのは、実はかなり難しい。
「書いても書いても全然うまくならない、どうして?」
と壁にぶつかってしまうもの。
本気で文章を書いている人なら、誰でも経験があると思います。
ほとんどの文章作法の本は、この謎を説明してくれません。
しかし丸谷才一『文章読本』では、日本語の文章の成り立ちに触れながら、書くことの難しさをわかりやすく教えてくれます。
日本語というのは、漢語、和語、西洋語のミックス。
生活によく馴染んだ言葉もあれば、生活感のない言葉や、歴史の浅い言葉もある。
言葉の選択をちょっと間違えるだけで、意味の伝わりにくい、おかしな文章になってしまうこともあるのです。
著者は説いています。
うまい文章とは結局のところ、言葉の使い方、組み合わせ方のうまさであると。
文章がうまくなるための実践的な方法は、ただ書けばいいというのではなく、「言葉の感性」を磨くこと。
本書のなかで一番大事な項目は、
「第二章 名文を読め」
名文をよく読んで味わうことが、この上ない文章上達の秘訣だと著者は言います。
「名文」とは、自分が本当に良いと思った文章のこと。
読書を通していろいろな名文を味わい、本物の言葉づかいに触れ、「言葉の感性」を磨くことが大切だと言います。
おすすめの理由②
名文からどう学べばいいのか教えてくれる
「思つたとほりに書け」といふ文章訓があつて、これがなかなか評判がいいらしい。話が簡単で威勢がいいから受けるのだらうが、わたしに言わせれば大変な心得ちがひである。
(中略)眼目は、頭に浮んだことをそのまますらすら写せばそれで読むに堪へる文章が出来あがるなんて、そんなうまい話があるものかといふことである。すくなくともわたしにはさういふ幸福な体験は一ぺんもなかつた。
これは当り前の話で、文章は文章の型にのつとつて書くものである。それが作文の基本なのだ。古人はみな、たとへば『文章軌範』とか『風俗文選』とか、さういふ名文集を熟読し、そらんずるくらゐにして呼吸を身につけ、その型に従つて書いた。(中略)
『文章読本』(丸谷才一/著 中公文庫)「第三章 ちよつと気取つて書け」より引用
頭に浮かんだことを素直に書いても、良い文章が書けるわけではありません。
人に読まれるような文章を書くには、やはり型に沿って書かなければならない。
「でも、型ってなんだろう?」
と考えたとき、ふつうは文法とか、起承転結とか、国語の例文なんかを想像しますよね。
ところが、そういうものを勉強しても、実際に良い文章は書けないでしょう。
私たちの学ぶべき「型」とは、「名文」のこと。
良い文章を書くためには、やはり良い文章から直接学ぶ必要があるのです。
丸谷才一『文章読本』の魅力は、豊富な名文を引きながら、名文からどう学べばよいのかを丁寧に教えてくれるところです。
「名文なんて、どこが良いのか素人にはわからない」
という人でも、その名文のどこが良いのか、どこがうまいのか、わかりやすく解説されています。
本書を読み終えた後、きっと「言葉の感性」が磨かれ、名文の読み方がわかるようになっていますよ。
おすすめの理由③
なぜ名文から学ぶべきなのかわかる
本書は、文章の書き方のテクニックが満載された、これ以上ないくらい実践的な文章作法の本です。
「言葉の選び方」、「具体的な描写の仕方」、「さまざまな比喩の使い方」、「文章の構成」など、本書で扱われている内容はどれも、文章を書くときに役立つものばかり。
しかし、ここに落とし穴があります。
本書を読むと、文章作法というものがいかに複雑で微妙なのかを悟るでしょう。
たとえ文章テクニックを必死に勉強しても、実践で使いこなすのはおそらく無理です。
うまい文章とは、たとえるならスポーツ選手の「ファインプレー」。
計算ではありません。
まず伝えたい思いがあり、それをより良く表現するために、個人の中に蓄積されていた「名文の読書体験」が活かされた結果、彼らはうまい文章を書くことができたのです。
本物の文章力を身につけるために私たちがすべきなのは、名文から直接学ぶこと。
名文をよく味わい、活きた言葉の使い方を感覚として身につけること。
それが文章上達の確実な道だということを、本書は筋道を立てて教えてくれます。
まとめ
『文章読本』(丸谷才一/著 中公文庫)は、豊富な名文を引きながら、それぞれの文章のうまさについてわかりやすく教えてくれます。
一口に「名文」といっても、文章のうまさは色々。
本書を読むと、さまざまな名文の良さを味わうための「言葉の感性」が磨かれるでしょう。
名文と付き合うことは遠回りのように見えますが、実はうまい文章が書けるようになる近道なのです。
本棚に加えて損はない名著なので、気になった人はぜひ本書を手に取ってみてください。
🔎おすすめの記事
honwohirakuseikatu.hatenablog.com