本当の幸せを探す旅――宮沢賢治『銀河鉄道の夜』の魅力
こんにちは、『文人』です。
宮沢賢治の代表作『銀河鉄道の夜』。
ジョバンニとカムパネルラが、夜空を走る不思議な銀河鉄道に乗って旅をするお話です。
有名な童話ですが、
「子供向けの作品でしょう?」
と思っている人もいるのではないでしょうか。
実は大人が読んでも楽しめるほど奥が深い、文学の名作です。
今回はそんな『銀河鉄道の夜』の内容と魅力をわかりやすく紹介していきます。
『銀河鉄道の夜』とは?
ジョバンニとカムパネルラは銀河鉄道の旅をする。大切な人との最期の別れを描いた、宮沢賢治の代表作。
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作者は宮沢賢治(明治29年~昭和8年)
岩手県の花巻の生まれ。詩人であり童話作家。
「イーハトーブ」を舞台に数多くの作品を残しました。
「イーハトーブ」とは、郷土の岩手をモチーフに賢治が心のなかに描いた理想郷。
- 作品の制作年は明らかになっていません。
未完の作品となっており、宮沢賢治は晩年まで『銀河鉄道の夜』を書き直していました。 - 現在読むことができるのは、「第3次稿」と「第4次稿」のふたつの作品で、それぞれ物語が異なります。
この記事で紹介するのは「第4次稿」の『銀河鉄道の夜』です。
『銀河鉄道の夜』の魅力
①主人公・ジョバンニと、親友・カムパネルラの関係
○主人公・ジョバンニについて
ジョバンニは貧しく孤独な少年です。
父親は漁へ出かけたきり帰らず、母親は病気で寝ています。
生活のために朝も昼も辛い仕事をしながら、学校に通っています。
おかげで学校のみんなと遊んだり話したりすることも減り、いじめられるようになってしまいました。
○親友・カムパネルラについて
ジョバンニには小さい頃からの親友がいます。
それがカムパネルラです。
ジョバンニがみんなから悪口を言われているとき、ただひとり、カムパネルラだけは何も言いません。
気の毒そうにジョバンニを見ています。
ジョバンニとカムパネルラは親友同士でありながら、お互いに気を遣い合って、昔のように話ができなくなっていました。
そんなとき、2人は銀河鉄道の汽車のなかで出会うのです。
2人は一緒に銀河鉄道で旅をします。
②最期の別れ
ジョバンニは銀河鉄道でさまざまな人と出会い、別れます。
そしてとうとうカムパネルラとも、別れの時が訪れるのです。
「カムパネルラ、僕たち一緒に行こうねえ。」ジョバンニが斯う云いながらふりかえって見ましたらそのいままでカムパネルラの座っていた席にもうカムパネルラの形は見えずただ黒いびろうどばかりひかっていました。ジョバンニはまるで鉄砲玉のように立ちあがりました。そして誰にも聞えないように窓の外へからだを乗り出して力いっぱいはげしく胸をうって叫びそれからもう咽喉いっぱい泣きだしました。もうそこらが一ぺんにまっくらになったように思いました。
『新編 銀河鉄道の夜』(宮沢賢治/著 新潮文庫)所収「銀河鉄道の夜」より引用
この別れの後、ジョバンニは、カムパネルラがもうこの世にいないことを知ります。
銀河鉄道で乗り降りする人たちは死者でした。
カムパネルラは、川に落ちた友だちを助け、おぼれてしまっていたのです。
③本当の幸せ
ジョバンニは銀河鉄道の旅を通して、さまざまな人間の死と向き合います。
『銀河鉄道の夜』はとても美しい世界が描かれる反面、優しい人々の死を見送るという辛く悲しい物語でもあるのです。
銀河鉄道の旅は、死者と一緒に、死後の世界をめぐる旅です。
それはつまり、死の側に立って、自分自身の生き方を見つめ直すこと。
生きるということは、自分のためだけではなく、家族や祖先といった自分を生んで育ててくれた人たち、今の世界を作ってくれた過去の人たち、これから先に生まれるであろう人たち、そういうすべての人たちとのつながりのために生きることでもあります。
『銀河鉄道の夜』には、
「ほんとうの幸」
という言葉が、ひとつのキーワードとして、作中に何度も出てきます。
どんなふうに生きるのが本当の幸せになるのか、答えは書かれていません。
しかし少なくとも、自分だけにとらわれず、死後の世界も含めたすべての人を大事にして、考えるべきことなのでしょう。
そのようなメッセージが込められているように感じます。
まとめ
宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』は、大切な親友・カムパネルラをはじめ、さまざまな優しい人々の死を通して、生きる意味や、本当の幸せとは何かを、私たちに問いかけてくる作品です。
銀河鉄道で出会う人たちについて想像をふくらませたり、感情移入したり、言葉の意味をかみしめたりすることで、優しく温かい気持ちになれます。
まだ読んだことのない人はぜひ本を手に取ってみてくださいね。
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